「アートと建築の様相」/長田直之 (建築家−ICU代表)
シュルツェの作品は93年以来、一辺5センチの正方形の複数のコットンピースを着彩し、壁面に貼るというアイデアから生産されている。彼の初期の作品に、ギャラリーの壁面全体を何色かの色彩を実際に重ね塗りし、最終的には白い壁面に切り絵のように塗り残した部分から下の層の色が現れるというものがある。 この作品は正統な壁画として,壁全体を塗るというプロセスにおいても明らかにウォールペインティングの範疇にある。しかし、その結果として知覚されるのは、塗り残した部分の形に色彩をペイントしたものと等価?なものである。これまでに展開されているコットンピースの作品の背景として,以上のプロセスがあったことは彼の作品を理解する上で重要なことである。そこには、図と地の図像的な、壁画とタブローの意味的な反転が同時存在している。 絵画の歴史をわざわざラスコーの洞窟の壁画に遡る必要はないが、近代以降に絵画を移動させるために「額縁」が発明されるまで、固有の場所とは切り離すことの困難なものであった。(そして、近代以降も美術館や住宅の壁を飾る恒久的/仮説的な壁画として扱われてきた) 壁画は、タブローとは異なり場所から自律した絵画ではなく、固有の場所をめぐるテキストの編み目のなかに織り込まれる。 シュルツェが、講演会の中で繰り返し参照したブリンキー・パレルモは、複数の不定形なキャンバスを壁面に構成した作品を展開する作家として一般に知られている。彼は1970年に、画廊空間を構成する壁面の裏側にある階段の輪郭(当然画廊側からは見えない)を画廊空間内部にペイントしたプロジェクトや、一枚の壁のこちら側とあちら側で二色の色彩をネガとポジの関係にペイントしたプロジェクトなど、空間に関わる仕事をしている。他にもシュルツェが言及した他の作家は、自律的な絵画平面についてではなく、(特に建築の)三次元空間についての問題を明確に持ったアーティストの作品が、歴史的にそして整然と語られた。これらの作家のなかにはリシツキーに代表される、ユークリッド的/カント的な空間概念に依然としてわれわれが拘束されていることへの批判を見ることができる。では、この拘束からどのように脱出することができるのか、しかもある「場所」から無関係にではなく。 シュルツェは自分の作品を最後に紹介しながら「想像空間」(直接・同時には知覚することのできないもの相互の関係性において切り開かれるような空間)への可能性を示唆した。 それは「壁画」というある固有の場所と結びついた絵画の形式を取りながらも、現実の慣習的な三次元空間に埋没することなく、別の空間を(想像的に)どのように設定するかという歴史的な問題の継承と深く関わっている。そして、この問題はアートほど絶対的ではない(相対的な)建築の問題でもある。 |
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| 注1 シュルツエの日本でのプロジェクトはギャラリーヤマグチのホームページに詳しい。 | ||||
| 注2 シュルツエが言及した作家は、ダニエル・ビュラン、ダン・フレイビン、ダン・グラハム、ゴードン・マッタ・クラーク、リッツキー等。 | ||||
| 注3 建築とアートの共通点と相違点については、ジャッドの『建築』(大島哲蔵訳/ギャラリーヤマグチ発行)から「比例はアートと建築に特有なのであり」、相違点はアートが美の観念に純粋に関与するに対して、建築は外形が直接的な機能の因子になっている、と述べた。 | ||||
| 住宅建築2000年7月号に掲載 | ||||
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参考写真:work by Blinky Palermo |
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| アンドレアス・カール・シュルツェ略歴 | ||||
| 鯖江高校プロジェクト | ||||
| アートと建築 Two Days Gallery+Open House、京都白洋舎ビル | ||||
| カイ・ヘイマー,マティアス・ルブケーテキスト | ||||